数々の名言を連発!「関ジャム」椎名林檎特集の振り返り
先日(2019.11.17)、ついに放送された「関ジャム 完全燃SHOW!」の椎名林檎特集。
番組のスタジオには椎名林檎とも交流が深い音楽プロデューサーのヒャダインと、作曲家の岩崎太整を招き、彼らの音楽的な疑問に対して椎名林檎が別VTRで回答していくといった内容でした。
本人のインタビュー映像では「2ちゃんねるの申し子」「ツイートを覗き見」「殿方は黙ってて!」「女の子たちの人生のサントラ」といった、林檎史に残る名言を連発。音楽の理論的な部分から、楽曲制作の裏側まで赤裸々に語ってくれる超貴重な特集となりました。
見逃してしまった方も多くいるかと思いますので、番組の要点(椎名林檎へのインタビュー)を中心に、簡単にまとめてみました。
椎名林檎への質問
作曲はどんな楽器でどんなやり方?
小っちゃい頃から楽器をやってるもんですから、楽器を触っちゃうと気持ちいい動きにいっちゃう…いわゆる手癖っていうものになるのが皆さんの悩みかと思うんですが、とにかく私はギリギリまで楽器に触らないっていうのと、あと本物の楽器に触ると…例えば生ピアノに触って、その響きが美しかったりするとうっとりしちゃって、そこに引っ張られちゃうと思うから触らない。
取り掛かれば、すぐなんですよ。ダラダラしている間も言い訳しちゃうんだけど「何もしてないって思わないで、考えてるから!」みたいな。その間にいろいろ(頭の中で)あるんですよ。条件が揃って、絞られていってるの。サボってる訳じゃないんです。だから、いざその録音機材を開いて…どんな楽器も本物っぽい音が出るでしょ。それで、イメージしていたものを組んでいくっていう。いきなり録音しちゃうんですけど。
録音機材を使ってどこから曲作りを始める?
曲のかかり始めを意識することが多いので…イントロですね。
例えば(『夢のあと』のイントロを演奏)だったりとか…ピアノのリフとかギターのリフからっていうのが…(『駅前』のイントロを演奏)みたいなこととか、そこからどういうふうに曲が展開するのかっていうのはもう分かってて、そこから時系列順にっていうのが多いかな。
歌がどのくらいのテンションで、ベロシティ(音量)でやってるかとかいうのはもちろんイメージしてるんだけど、大体楽器からですね。楽器のフレーズ。その曲たらしめる印象的なリフっていうのが重要。
あと、和声(コード)っていうのは、コードネームで考えないようにしているかもしれません。楽器を触らないっていうのと一緒で、「M9の響きに歌が行くな」とか、そういうこと考え出しちゃうと…何かと一緒だとか、自分の書いた5年前のアレと一緒だとかって考え出すと、勇気が出なくなっちゃうので。バカなフリして一回書いてみるとかっていうのを、いつも。
曲のモチーフや発想はどこから得ている?
お客さんたちの日々の暮らしのツイートとかを覗き見てて、「なにか落ち込んでる」って思ったら、そのことに対して贈りたいって思ったりとか。「こんなサウンドでこんなものがあったら」「スカッとして欲しい」とか。それがメインですね。
インターネット前夜って感じの時だったかな…デビューしたのが98年だから、本当に2ちゃんねるの申し子というか…。やっぱり匿名で本音を仰るという、こういうムードに慣れきっているので、直接頂くお手紙だと分かんないんですよ。なんかもう、礼賛というような内容しか書いてくださらないので。
それより「今回の全然ピンとこない!」とか、期待されていることと、そうでないことっていうのを本音で仰っているのを見たいんです。
『獣ゆく細道』の難解なBメロの意図は?
(スタジオのヒャダインからの質問)
それをわざわざ仰るってことは、たぶんお気づきだと思うんだけど…冒頭に「この世は無常」っていう導入部分があって、それがその、常々生きているうえで我々に巣食ってくるこの不安感であったり、心許なさっていう…そういったものの象徴として、こういう不安を煽るコードですが。
Bメロの後半で、「あたまとからだ」っていう相槌みたいなものがありますけど、ようするに己の中のもう一人の己の声というか。相手役に歌わせるっていうことを、ちょっとやってみたかったんですね、音楽的に。
Bメロは相槌を入れるための作りになっているというか、冒頭の「この世は無常」というのが「あたまとからだ」とか常に付きまとう不安役として、フレーズと和声(コード)が役割を果たしているという…つもりです。ごめんなさい説明が下手くそで(笑)
オススメのコードは?(ジゴロ進行について)
(スタジオの岩崎太整からの質問)
「m9(マイナーナインス)に歌が着地しがちだよね」ってよく言われるんですけど…ネット上とかで言われているのを見て気にしているんですけど。絶対にしないようにしようとか思ったりして。
太整くんといえば…私がよく使うと言われているらしい…この進行(『丸の内サディスティック』のコード進行(通称※ジゴロ進行)をピアノで即興でプレイ)。
※ジゴロ進行
A♭M7→G7→Cm7→E♭7
誰が聴いても気持ちよくなっちゃって…っていう。このコードを使うことに、なんの抵抗も無いかといえば…あるんですが。『Just The Two Of Us』とか数々の名曲の伝統のコードワークですね、運び。
これを使うときは、一味違うスパイス、エッセンスを効かせて使うぞという…挑む気持ちでいつも使っています。
『丸の内サディスティック』もそうなんだけど、さっきの『目抜き通り』でも出てくるんですよね。同じなんですけど、ちゃんと別の曲として認識して頂けるでしょ?
いかにメロディーで引っ張っていくかっていう所は腕の見せ所で。メロディーメーカーとしては。コードをありきたりなモノでも工夫して用いる。
転調をどこまで意識している?
あんまり最初考えないようにしてて。他人(ひと)の曲を聴くと分析的に聴いちゃうんだけど自分が書く時に、それこそよく「子どもの耳」って言いますけど、分からないで進行していって、意識しないほうが上手くいくような気がします。
でも、たまに考えますけどね。「ここで何度転調する作りのヤツやってみたいな」とか考えることあるけど、あんまり得てして美味しくなかったりして。いちばん重要なことが置いていかれる感じが…なんか「下半身で書けてない」っていうか。「子宮で書いてない」みたいな。
楽理を気にして聴いていらっしゃらない女の子たちが自然に寄り添って、その方々の人生のサントラになってて欲しいって思ってますけど。
影響を受けた音楽は?
音楽自体はやっぱり…本当に正直なことを言っちゃうと、やっぱり子どもの頃、勝手に両親なり兄なりがかけていたものが一番大きいだろうなとは思ってしまいますね。ふとした時に出てきてるんじゃないかと。バレエ音楽ですね、やっぱり。
どれが好きというよりは、バレエに必要な踊り側の肉体の躍動に必要な訛りっていうのが、私にとっては重要なんじゃないかなと思います。
私、よくワルツを書くんですよ。1泊目の動きが大きければ、その1泊目は長くないと気持ち良くない。そういうものを、もうちょっと自然な、時計で管理していない もっと原始的な訛りを残したモノをポップスとしてラジオから流れるように持っていきたいっていうのも、どこかにあるかもしれませんね。ある、あるね。あります。
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曲間がないのはなぜ?
なんでって…それは今散々出た「女の子たちの人生のサントラ」だから、女の子たちのツイート見てると、朝出勤するときは凄い調子良かったのに、上司がいきなりこんなこと言ってきて「生きるの嫌になっちゃった」くらいまでドーンと沈んだりとかされてるでしょ。殿方のことは知ったこっちゃないんですけど。
女の子の人生っていうのは凄く本当に変な…心無い殿方たちの一言とか、ちょっとした失言で左右されちゃったりするわけですよね。生理もあるし、自分の内なる勝手なバイオリズム。コントロールできない。仕様がない。それと合致しちゃって、もうドーンって帰ってこれなくなって長引くとか…ザラですから。
そういうのからすると「よかったね、ジャーン」とかならないじゃないですか。だから、それをリアリティをもって描きたいので。彼女たちのそういう忙しない日々に寄り添う内容っていう。「殿方は黙ってて、分からないだろうから」っていう感じで。こっちはこっちでやってっからっていう。
ただ、さっき申し上げた殿方っていうのにヒャックン(ヒャダイン)は入らないから。機微の赴きのある方ですからね。そうじゃない殿方ですよ。
未公開&補足説明
後日の放送で、未公開シーンと補足説明がオンエアされました。
→【関ジャム】椎名林檎特集の未公開&補足説明
おわりに
番組ではスタジオ側でも数々の楽曲解説が紹介されていましたが、当記事では椎名林檎のインタビューのみに着目してまとめてみました。
かつて、NHKの「トップランナー」という番組に出演した際も、五線譜と鉛筆のみというシンプルな作曲方法を紹介していましたが、今でもその方法は変わらないようですね。
2ちゃんねるの申し子…と、完全に「椎名林檎板」のことを名指し。皆さんのツイートも日々監視しているということで、まさしく「賛否両論頂戴」(『浪漫と算盤』)といったところ。
永久保存版の番組となりました。番組スタッフの皆様ありがとうございました!
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