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NHK-FM「今日は一日“ピアソラ”三昧」椎名林檎コメント

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2021年5月4日(火)放送
NHK-FM「今日は一日“ピアソラ”三昧」

※NHKネットラジオ「らじる★らじる」で5月14日(金)まで聴き逃し配信中です。椎名林檎コメントは「後半」の冒頭より。
https://www.nhk.or.jp/radio/ondemand/detail.html?p=0097_01

<文字起こし>
「今日は一日“ピアソラ”三昧」をお聴きの皆様、椎名林檎です。

私は普段、お商売としては歌の入っている音楽を書いています。しかし小さい頃から両親が家でかけていたレコードといえば歌ものはほとんどなくて、交響曲だったり、ピアノコンチェルトだったり、それからやっぱりマイルス、ピアソラといった優れたプレイヤーがバンマスを務めるセッションなどが中心でした。私が16、7のころバイトをして初めて頂いたお給料で買ったのが、コンサーティーナという六角形のバンドネオンのような楽器で、当時すでにエレキのバンドをやっていたにも関わらず、真っ先に手を伸ばした先がわざわざそういう難しい楽器だったというのは、明らかにピアソラのせいだと思います。

では、彼の作品の魅力とは一体どこにあるのでしょうか。まず、バンドネオン奏者として、ピアソラはどんなに能弁な歌詞よりも、リリカルに物悲しいフレーズを次々畳み掛けてきます。その性急なフレーズに寄り添う見事なコードワークも見逃せません。また、それらハーモニーを担う楽団も小編成から大編成までその都度曲のために適材適所に鳴らされているようです。

ところで私はテディ・ライリーというトラックメイカーが好きです。彼が90年代に発明したニュージャックスウィング。そのビートを繰り出されると、どうにも抗えずステップを踏んでしまいます。このようなダンスミュージックは基本的に一定のテンポに作られています。かたやピアソラはどうでしょう。彼の音楽のテンポはしばしば伸びたり縮んだりします。あの緻密なアンサンブルが、どんどん早くなって、迫ってくるとき、私はとくに他のものでは代用できない強い快感を覚えます。そしてもちろん、おもわず踊りだしてしまいます。ニュージャックスウィングのように、一定のテンポで細かい泊が揺れるとき、歩いている私の肉が一緒に揺れます。脇腹、二の腕、両頬、など。本来恥ずべき自分の怠慢の証すら、誇らしく思わせてくれる。こういうダンサブルさは、肉体的と言えるかもしれません。それに比べて、ピアソラの音楽のダンサブルさは、もう少し精神的なものと言っていいでしょう。

この世の無常、理不尽な社会、足らない言葉、いつも間に合わない未熟な自分、またどなたかへご迷惑をお掛けするのではないかと早鐘を打つ私の胸に、ぴったり寄り添うのがピアソラのアッチェレランドです。彼の場合、バンドネオンを奏でることによって、テンポ感を含め、全体のアンサンブルを指揮していたのではないでしょうか。そう考えますと、彼はきっと踊りへの造詣が深く、人としても味わい深く、楽器の技工のみならず、あらゆる意味でテクニシャンでいらしたのではないでしょうか、などなど…妄想はつきませんが。さておき、お聞きいただきましょう、アストル・ピアソラで「El choclo」。

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